ダークナイト

2021-03-08

ダークナイト(原題: The Dark Knight)

評価 ★★★★☆(星4つ)

あらすじ

前作でマフィアと汚職に支配された街ゴッサムシティの守護者になったバットマンの前に、ピエロに扮した犯罪者ジョーカーが現れる。協力者と共にゴッサムシティの腐敗を一掃しようとするバットマンを嘲笑うかのようにジョーカーは犯行を重ねる。ゴッサムシティが恐怖と混乱のどん底に突き落とされたとき、人々とバットマンは究極の選択を迫られる。

前作「バットマン ビギンズ」を1作目とした全3部作の第2弾目。単独作品として見ても不足のない、正義と悪の対比が描かれた重厚な作品。悪役ジョーカーの存在感が非常に強くダブル主演と考えてもいいほど。

鱗を模したシャツ、舌舐めずりをするような話し方に表される通り、ジョーカーのモチーフは蛇である。言わずもがなこの蛇は楽園のアダムとイブを堕落させ、荒野のイエスを誘惑したサタンの変じた姿である。ジョーカーをサタンとし、善と悪の闘争をテーマに据えたこの作品は全体にキリスト教的エッセンスが散りばめられている。作中にも新約聖書のキリストとサタンの荒野の問答を彷彿とさせるシーンが多い。「人間の本質は『悪』だ」と語りそれを証明するかのように人心の弱みに付け込んだジョーカーの犯罪手口はまさに悪魔的であり、まさにヒーロー映画に擬態した宗教映画と言ってもいいではないだろうか。そんな中1989年版バットマンへのオマージュと受け取れるシーンもあるので往年のファンはにっこりである。

観賞する際に記憶においてほしいのが、ジョーカーがハーヴィーを説得するシーン。“I’m agent of chaos.Oh,and you know the thing about chaos? it’s fair.”「俺は混沌の案内人だ。そうだ、混沌の本質を知っているな。それはフェア(公平)だ。」のフェアが字幕・吹き替えともにフィアー(恐怖)で訳されてしまっていることだ。映画史に残る誤訳と言われるだけあり、これでは意味が全く変わってしまう。どうか留意して観ていただきたい。